熊本の人手不足はAIでどう補う?少ない人数でも回る仕事にする方法

熊本の会社の事務所で、少ない人数のスタッフがノートパソコンとスマートフォンを使って注文の確認をしている様子

最終確認日:2026年10月31日(統計の数字は、公表された時点のものです。最新の数字は各出典のページで確認してください)

熊本では、求人を出しても人が集まりにくい状態が続いています。県全体の有効求人倍率は全国と同じくらいまで落ち着いてきましたが、建設・医療・介護などの仕事では、1人の求職者に3〜4件の求人がある職業もあります。採用だけで人手不足を埋めるのは、これからますます難しくなります。

そこで考えたいのが、AIと仕組みで「人がやらなくてもよい作業」を減らし、今の人数でも仕事が回るようにすることです。AIが得意なのは、届いた書類の内容を読み取って写す、まとめる、仕分けるといった事務の手作業です。この記事では、熊本の人手不足の現状を公的なデータで確かめたうえで、どの仕事をAIに任せ、どこから始めればよいかを紹介します。

目次

熊本の人手不足は、今どれくらい深刻?

県全体で見ると、求人倍率は数年前より落ち着いています。ただし、職業によって差が大きく、現場の仕事では人がとても足りていません。また、若い人の県外への就職や人口の減少で、これから働く人はさらに減る見込みです。

県全体の数字(熊本労働局、2026年9月分)

熊本労働局が2026年10月30日に公表した「一般職業紹介状況(令和8年9月分)」によると、熊本県の数字は次のとおりです。

  • 有効求人倍率(季節調整値)は1.19倍で、全国の1.19倍と同じです。求職者1人に対して、1.19件の求人があるという意味です
  • 年度の平均で見ると、令和4年度の1.42倍から、令和7年度は1.15倍に下がっています
  • 正社員の有効求人倍率は1.10倍で、前の年の同じ月より0.04ポイント上がりました
  • 9月の新規求人数は11,867人で、前の年の同じ月より6.3%増えました。製造業は29.0%増、そのうち電子部品・デバイス・電子回路の製造業は237人(前の年の同じ月は110人)でした。一方、宿泊業・飲食サービス業は24.3%減でした
  • 新規求人数に対する充足数の割合(充足率)は13.1%でした。ハローワークに出された求人のうち、その月に人が決まったのは1割ほどということです

出典:熊本県の雇用情勢(令和8年9月分)(熊本労働局)、一般職業紹介状況(令和8年9月分)PDF

職業別に見ると、現場の仕事ほど足りていない

熊本県が2026年6月25日の「くまもとで働こう」推進本部会議に出した資料では、2026年4月の職業別の常用求人倍率が紹介されています(熊本労働局の統計による)。

  • 土木作業:4.06倍
  • 建築・土木・測量技術者:3.86倍
  • 医療技術者:3.43倍
  • 介護サービスの職業:2.78倍
  • 接客・給仕の職業:1.98倍
  • 輸送・機械運転の職業:1.49倍

県全体では1.19倍でも、建設や医療・介護の会社にとっては「募集しても、なかなか応募が来ない」のが実感に近いはずです。

若い人の県外就職と、2040年の見通し

同じ資料によると、2026年3月に卒業した高校生のうち、県内で就職した人の割合は65.4%でした。全国平均は80.0%で、熊本県は全国42位です。

さらに、県の資料では、熊本県の15〜64歳の人口(生産年齢人口)は2020年から2040年にかけて約20%減る見込みとしています。2040年には県全体で約4.5万人の働き手が足りなくなり、職種別では次のような「ずれ」が出ると見込んでいます(経済産業省の資料をもとに熊本県が作成)。

  • AI・ロボットなどを使いこなす人材:約6.3万人の不足
  • 現場の人材(生産工程・建設・サービスの仕事など):約5.2万人の不足
  • 事務職:約4.8万人の余り

この見込みからは、事務の作業はデジタルの仕組みで少ない人数でも回るようにし、人は現場やお客様の対応に回す、という方向が必要になると考えられます。

出典:「くまもとで働こう」推進本部(熊本県)、令和8年度第1回「くまもとで働こう」推進本部会議資料 PDF

TSMC(JASM)の進出は、人手不足に関係している?

熊本県の同じ資料は、2024年にTSMCの製造子会社JASMの開所式が行われ、第2工場の建設も発表されたこと、周辺に関連企業が集まり、県北を中心に半導体の産業の集まり(クラスター)ができていることを紹介しています。また、菊陽町・大津町などに新しく人が集まる地域が生まれる一方で、地方部では高齢化と若い人の流出が深刻になっているとしています。

上で紹介したように、電子部品などの製造業の求人は前の年より増えています。ただ、県全体の求人倍率は全国と同じ水準で、熊本の人手不足を半導体工場の進出だけで説明することはできません。仕事が増え、県外から人が集まるよい面もあります。会社としては、「人を採るのがさらに難しくなるかもしれない」という前提で、今いる人の時間をどう使うかを考えておくのが現実的です。

人を雇う費用も上がっている

熊本県の最低賃金は、2026年12月1日から時間額1,092円になります。それまでの1,034円から58円の引き上げです。人を増やして作業をこなす方法は、費用の面でも重くなっています。

出典:熊本県最低賃金の改正(熊本労働局)、令和8年度熊本県最低賃金の改正答申について PDF

なお、全国では、帝国データバンクが2026年1月に行った調査で、正社員が足りないと答えた会社は52.3%でした。人手不足は熊本だけの問題ではありません(帝国データバンクの発表、2026年2月20日)。

2026年7月の令和8年熊本地震で被害を受け、建物や設備の再建と人手の確保を同時に進めている会社もあると思います。再建に使える支援制度は、熊本の補助金・助成金の記事にまとめています。まずは公式の窓口で、ご自身の状況に合う支援を確認してください。

AIで補えるのは、どんな仕事?

AIで補いやすいのは、「届いた情報を読み取って、決まった場所に写す・まとめる・知らせる」作業です。反対に、お客様との関係づくりや、その場で判断が必要な仕事、現場での作業は、人がやるべき仕事として残ります。

仕組みに任せられる仕事

  • LINE・FAX・メールで届いた注文書を読み取って、表やシステムに入力する
  • 取引先ごとに書式が違う書類(タイムカード、請求書など)を読み取って入力する
  • 問い合わせを受け付けて記録し、担当者に知らせる。返信の下書きを作る
  • 決まった連絡、集計、日報や議事録のまとめ

こうした作業は、ITのツールとAIを組み合わせて自動にできます。私たちがよく使うのは「n8n(エヌエイトエヌ)」という、アプリ同士をつないで作業を自動にするツールです。詳しくはn8nとは?の記事をご覧ください。

人がやるべき仕事

  • お客様の相談に乗る、関係を育てる
  • 値引きや例外の対応など、判断が必要なこと
  • 施工・介護・調理などの現場の作業
  • AIが出した結果の最終確認

AIで現場の作業そのものを代わることはできません。ただ、現場の人が仕事の合間に抱えている入力や連絡の手間を減らせば、そのぶん本来の仕事に時間を使えます。

少ない人数でも回る仕事にする5つのステップ

いきなり会社全体を変える必要はありません。次の順番で、小さく始めるのがおすすめです。

1. 仕事を書き出して、「人」と「仕組み」に分ける

まず、1週間ほどの仕事を書き出します。そのうえで、一つひとつの作業を「人がやるべき仕事」と「仕組みに任せられる仕事」に分けます。「毎回同じ手順でやっている」「別の場所に同じ内容を写している」作業は、仕組みに任せられる候補です。

2. 1つの作業から始める

候補の中から、まず1つだけ選びます。選ぶときの目安は次の3つです。

  • 毎日、または毎月くり返している
  • 手順がほぼ決まっている
  • 遅れたり、間違えたりすると困る

1つ目がうまくいくと、社員も「これなら使える」と実感できます。2つ目、3つ目は、そのあとで広げれば十分です。

3. お客様や取引先の連絡の方法は変えない

新しいシステムを入れると、取引先に「このページから注文してください」とお願いすることになりがちです。それでは相手の手間が増え、使ってもらえないこともあります。LINE・FAX・電話・メールなど、今の受け方はそのままにして、受け取ったあとの作業だけを自動にするほうが、社内にも社外にも負担がかかりません。

4. AIの結果は、人が確認してから使う

AIは、手書きの文字や見慣れない書式を読み間違えることがあります。そのため、AIが読み取った結果と元の書類を並べて、人が確認する手順を必ず入れます。入力は仕組みに任せて、人は確認に集中する、という分け方です。元の書類は保管して、あとから見直せるようにしておくと安心です。

5. 社員が使えるように、教える

仕組みを作っても、社員が使い方を知らなければ定着しません。最初は、確認のやり方や、うまく動かなかったときの連絡先を決めておきます。あわせて、ChatGPTなどの生成AIを日々の仕事でどう使うかを学ぶ場を作ると、社員が自分で手作業を減らせるようになります。社員向けの研修は、AI研修のページでご紹介しています。

実際に、どんな作業を自動にした?

ZenJunが自動化をお手伝いした2つの例を紹介します。どちらも、人を増やすのではなく、仕組みで手作業を減らした例です。

注文の登録を自動にした例(物販の会社)

この会社では、注文がLINEで届く手書きの注文書の写真、FAX、電話の3つの方法で届いていました。注文管理のスプレッドシートはありましたが、外での作業が多く、事務所に戻ってパソコンを立ち上げて入力するまでに、1件あたり最低でも5分はかかっていました。

そこで、注文の受け方は変えずに、n8nとAIで注文書を読み取り、スプレッドシートに自動で登録する仕組みを作りました。読み取った結果と元の写真は管理チームに届き、人が確認します。出先でも、LINEに写真を送るかチャットするだけで、その場で注文を登録できるようになりました。

タイムカードの入力を自動にした例(取引先で働くスタッフが多い会社)

この会社では、月末になると、取引先ごとに書式の違うタイムカードがメールで届きます。月末の入力のためにスタッフを雇ったこともありましたが、費用対効果を実感しにくかったそうです。

n8nとAIでタイムカードを読み取り、システムに自動で入力するようにしたところ、1人分の入力に10分ほどかかっていた作業が、確認だけの1分ほどになりました。

どちらも、「人を1人増やす」のではなく、「人がやらなくてよい作業をなくす」ことで、今の人数のまま回るようにした例です。

よくある質問

AIを入れたら、社員を減らすことになりますか?

人手不足の会社では、減らすためではなく、「足りない人の分を補う」ために使うのが現実的です。入力や転記の時間が減れば、そのぶんお客様の対応や現場の仕事に時間を回せます。

パソコンが苦手な社員ばかりでも使えますか?

使えるように作ることはできます。上の注文の例では、社員の操作は「LINEに写真を送る」「結果を確認する」だけです。新しい操作を覚えてもらうより、いつも使っている道具の中で済むように作るのがコツです。

どこに相談すればいい?使える支援は?

熊本では、国や県・市の補助金・助成金を使って、ITツールの導入や社員の研修の費用を一部まかなえる場合があります。2026年10月31日時点で受付中の制度は、熊本の補助金・助成金の記事にまとめています。

ZenJunは熊本県を拠点に、熊本の会社の業務の自動化やAIの使い方をお手伝いしています。熊本県内であれば、訪問してのご相談にも対応しています。「どの作業から自動にすればよいか分からない」という段階からご相談ください。

まとめ

  • 熊本県の有効求人倍率は1.19倍(2026年9月)で全国と同じ水準ですが、土木作業4.06倍、介護サービス2.78倍(2026年4月)など、現場の仕事では人がとても足りていません
  • 熊本県は、2040年に働き手が約4.5万人足りなくなる一方、事務職は余ると見込んでいます。事務の作業は仕組みで減らし、人を現場やお客様の対応に回すことが大切になります
  • AIで補いやすいのは、届いた情報を読み取って写す・まとめる・知らせる作業です。判断や現場の作業は人に残します
  • 始めるときは、仕事を「人」と「仕組み」に分け、1つの作業から自動にします。お客様の連絡方法は変えず、AIの結果は人が確認し、社員が使えるように教えます
  • 採用が難しくなる前提で、今いる人の時間を何に使うかを決めておくことが、人手不足への現実的な対策です
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