n8n(エヌエイトエヌ)とは、メール・LINE・スプレッドシート・AIなどのアプリをつないで、決まった仕事を自動で回すためのツールです。「メールが届いたら、添付の書類を読み取って、表に書き込む」といった流れを、画面上で部品をつなぐように作れます。
この記事では、私たちZenJunがお客様の会社で実際に作った自動化(手書きの注文書の登録、タイムカードの入力)を例に、n8nでできること、料金の考え方、使う前に知っておきたい注意点を解説します。
目次
n8nとは?ひとことで言うと「仕事の流れをつなぐ道具」
n8nは、「何かが起きたら(きっかけ)、決まった処理をする」という仕事の流れを、自動で動かすツールです。この流れを「ワークフロー」と呼びます。プログラムを書かなくても、画面上で四角い部品(ノード)を線でつないで作れます。
たとえば、次のような流れを1つのワークフローにできます。
- LINEで注文書の写真が届く(きっかけ)
- AIが写真の文字を読み取る
- 注文管理のスプレッドシートに1行追加する
- 担当者に「読み取り結果」と「元の写真」を送って確認してもらう
読み方と名前の由来
読み方は「エヌエイトエヌ」です。英語の「nodemation(ノード+オートメーション)」を略した名前で、nとnの間に8文字あることから「n8n」と書きます。
Zapier・Make・Difyとの違い
同じように「つないで自動化する」ツールには、ZapierやMakeがあります。また、AIのチャットやエージェントを作るツールとしてDifyもよく比べられます。
- n8n:業務の流れの自動化が得意。AIを途中に挟んだり、条件で処理を分けたりしやすい。クラウド版のほか、自社のサーバーでも動かせる
- Zapier:有名なアプリ同士の、簡単なつなぎこみが得意。クラウドのみ
- Make:画面で流れを見ながら、ある程度複雑な自動化を作れる。クラウドのみ
- Dify:AIのチャットボットやAIアプリを作るのが得意。クラウド版のほか、自社のサーバーでも動かせる
n8nの特徴は、自社のサーバーでも動かせることと、条件で処理を分けたりAIを途中に挟んだりといった、細かい作り込みがしやすいことです。
n8nでできること:会社の仕事での2つの例
n8nでできるのは、「きっかけ」と「決まった処理」の組み合わせで表せる仕事の自動化です。たとえば、メール・LINE・フォームで届いた内容を表やシステムに登録する、届いた書類をAIで読み取って転記する、決まった時間に集計して担当者に知らせる、といった仕事です。
問い合わせの受付や振り分けに使う方法は「問い合わせ対応をAIで自動化する方法」で紹介しています。
ここでは、私たちがお客様の会社で実際に作り、今も使われている自動化を2つ紹介します。
例1:LINEやFAXで届く注文書を、自動でスプレッドシートに登録(物販の会社)
この会社では、注文が「LINEで送られてくる手書きの注文書」「FAXの注文書」「電話」の3つの経路で届いていました。注文管理用のスプレッドシートはあったものの、入力するにはパソコンを開く必要がありました。外での作業も多く、事務所に戻ってから入力する流れだったため、パソコンを立ち上げて入力するまでに1件あたり最低でも5分はかかっていました。結果として入力が後回しになり、発送漏れが起きることもありました。
そこで、次のような仕組みをn8nで作りました。
- LINEで届いた注文書:LINEにメッセージが届いたことをきっかけに、写真をAIで読み取り、スプレッドシートに登録
- FAXの注文書:FAXをメールで受け取るようにし、メールの受信をきっかけに同じ処理をする
- 電話の注文:受けたスタッフが、その場でLINEに注文内容をチャットで送るだけで登録される
読み間違いを防ぐため、読み取った結果と元の写真を同時に管理チームへ送り、人が確認する手順を入れています。写真やPDFは必ず保管し、スプレッドシートの各注文にリンクを貼っているので、発送の前に原本を見直すこともできます。
出先でも、LINEにチャットか写真を送るだけでその場で登録できるようになりました。お客様からは、時間が短くなったこと以上に「注文の記録がはっきり残るようになった」ことを喜んでいただけました。
この会社は、別の会社から「注文システムを入れませんか」という提案も受けていたそうです。ただ、注文システムにすると、今まで電話や紙で注文していた取引先が、ログインして注文内容を入力しなければならなくなります。n8nなら、取引先の注文のしかたは今までどおりのまま、社内の作業だけを自動にできます。社長からは、次のような声をいただいています。
とにかく、注文が届かないというミスをいちばん避けたかった。そのためにスプレッドシートを作ったものの、スタッフにうまく使ってもらえていませんでした。私は、注文がお客様に届けばどんな形でもいいと思っているので、それが実現できて嬉しいです。(物販の会社 社長)
この事例の詳しい内容は、導入事例:LINE・FAXの注文書を、スプレッドシートに自動で登録で紹介しています。
例2:メールで届くタイムカードを、システムに自動入力(取引先で働くスタッフが多い会社)
この会社では、スタッフが複数の取引先で働いていて、月末にはそれぞれの取引先から何人分ものタイムカードがメールで届きます。しかも、取引先ごとにタイムカードの書式が違います。
以前、入力のシステムを作ることも考えたそうですが、書式を1つ増やすたびに費用がかかります。書式を増やしても、その取引先との取引が終わったり、その取引先で働くスタッフが1人だけだったりして、費用に見合わないと感じていたそうです。月末の入力のためにスタッフを雇ったこともありましたが、費用対効果を実感しにくかったとのことでした。
そこで、n8nとAIを組み合わせて、メールで届いたタイムカードを読み取り、システムに自動で入力する仕組みを作りました。AIが書式の違いを読み取るので、取引先が増えても書式ごとの設定を作り込む必要がありません。
今は月末に、入力されたデータを確認するだけです。1人分の入力に10分ほどかかっていた作業が、確認だけの1分ほどになりました。
詳しくは導入事例:書式がばらばらのタイムカードを、システムに自動入力をご覧ください。
n8nは無料で使える?料金の考え方
自社のサーバーで動かすセルフホスト版(Community Edition)なら、ソフトは無料で使えます。n8nの会社のサーバーで動かすクラウド版は有料ですが、14日間の無料トライアルがあり、Proプランの機能を試せます(2026年10月31日に公式の案内で確認)。
n8nには、大きく分けて2つの使い方があります。
- クラウド版:n8nの会社が用意したサーバーで動かします。月額の料金がかかり、プランごとに「ワークフローを月に何回動かせるか」の上限があります。ワークフロー1回の実行を1回と数えます
- セルフホスト版:自社で用意したサーバーで動かします。無料のCommunity Editionがあり、ソフトの利用料はかかりません。ただし、サーバーの費用と、更新・バックアップなどの手間がかかります
クラウド版は、年払いの場合で月20ユーロのStarterプランからあります(2026年10月29日に公式の料金ページで確認)。料金は変わることがあるので、申し込む前にn8nの公式料金ページで確認してください。プランごとの料金、実行回数の数え方、セルフホストにかかる費用は「n8nの料金はいくら?」で詳しく解説しています。
私たちは、お客様の状況に合わせてクラウド版とセルフホスト版を使い分けています。サーバーの管理をしたくない、まずは小さく試したいという場合はクラウド版。扱うデータを自社の環境に置いておきたい、動かす回数が多くなりそうという場合はセルフホスト版を検討します。
n8nの使い方:自動化を作る流れ
n8nでの自動化は、次の流れで作ります。例1の注文書の自動化に当てはめると、イメージしやすくなります。
- きっかけ(トリガー)を決める:「LINEにメッセージが届いたら」「メールを受信したら」など、処理を始める合図を置きます
- 処理の部品(ノード)をつなぐ:写真をAIで読み取る、スプレッドシートに1行追加する、管理チームに通知する、といった部品を順につなぎます
- アプリとの接続を設定する:つなぐ先のサービスを、n8nが操作できるようにします。Googleなら、アカウントでログインして許可します。LINEは、LINEの開発者向けの管理画面で発行する「鍵(アクセストークン)」と、n8nの受付用のURL(Webhook)を設定してつなぎます
- テストする:実際の注文書の写真で試し、読み取り結果や登録される内容を確かめます
- 公開して本番で動かす:「Publish(公開)」ボタンを押すと、きっかけが起きるたびに自動で動くようになります。「公開」といっても、外部の人に見えるようになるわけではありません。公開したあとに直した内容は、もう一度Publishを押すまで本番には反映されないので、動いている仕組みを止めずに手直しできます

GoogleスプレッドシートとつなぐときのGoogle側の設定は、つまずきやすいところです。手順はn8nとGoogle Sheetsの連携方法の記事と動画で解説しています。
使う前に知っておきたい注意点
n8nを会社の仕事で使うときに大事なのは、「止まったときに気づけること」と「AIの読み取りを人が確認すること」の2つです。そのほか、次の点も先に考えておくと安心です。
- 画面は英語:設定画面は英語の表示です。慣れるまでは、どこを設定すればよいか迷うことがあります
- 止まったときに気づけるようにする:連携先のログインが切れたり、想定外の書式の書類が届いたりすると、ワークフローが途中で止まることがあります。止まったら担当者に通知が届くようにしておきます
- AIの読み取りは、人の確認とセットにする:例1・例2のどちらも、最後は人が確認する手順を残しています。手書きの文字は読み間違いがありえるので、確認なしで発送や給与計算に使わないようにします
- 作った人しか直せない状態にしない:何をしているワークフローか、誰が見てもわかるようにメモを残します
- セルフホスト版は運用の手間がかかる:ソフトの更新、バックアップ、セキュリティの設定を自社で行う必要があります
n8nが向いている会社・向いていない会社
n8nの良さは、手軽に作れて、処理を増やしたり減らしたりしやすいことです。「システムを入れるほどではないけれど、この手作業はなんとかしたい」という会社にいちばん向いています。
向いている会社
- 今のやり方(LINE・FAX・メール)を変えずに、社内の作業だけを減らしたい
- 書類の書式がばらばらで、システムを作り込むと費用が合わない
- 月末だけ・一部の人だけなど、作業の量が限られている
- 小さく始めて、効果を見ながら広げたい
向いていない会社
- 取引先にも新しい画面で入力してもらう、本格的な注文システムが必要
- 決まった書式の大量のデータを、厳密に処理したい
- 何を自動にするかがまだ決まっていない(先に仕事の流れの整理が必要)
- 動かし始めた後、誰も面倒を見られない
向いていない場合は、業務システムを作る、既製のサービスを使うなど、別の方法のほうが合うこともあります。
何を自動にするかを決めるところから始めたい場合は、「AIで業務効率化するには?小さく始める5つの手順」が参考になります。
よくある質問
n8nは日本語で使えますか?
n8nの画面は、公式には英語の表示だけです(2026年10月29日時点)。自社のサーバーで動かす場合は表示する言語の設定がありますが、日本語の翻訳が用意されていないため、英語のまま表示されます。ブラウザの翻訳機能を使えば日本語に訳して見られますが、訳が不自然なところもあります。
一方、ワークフローの中で扱うデータ(注文の内容、メールの本文など)は日本語で問題ありません。AIへの指示も日本語で書けます。
プログラミングの知識は必要ですか?
簡単な流れなら、プログラミングなしで作れます。ただ、AIへの指示の書き方や、データの形をそろえる処理では、少し慣れが必要です。最初は詳しい人と一緒に作るのが近道です。
会社の業務で使ってもよいですか?外部の会社に作ってもらっても大丈夫?
はい、自社の業務のために使うことは認められています。自社のサーバーで動かす場合は「Sustainable Use License」というライセンスが適用され、自社の業務のため、または営利目的でない・個人での利用に使えます。
外部の会社にワークフローの作成や設定、保守を頼み、その費用を払うことも、公式のライセンスFAQで認められています。一方、n8nを他社向けのサービスとして提供し、利用者が自分でワークフローを作れるようにする使い方(n8nそのものを売るような使い方)は認められていません。
クラウド版は、n8nの会社との契約(利用規約)にもとづいて使います。詳しくはn8nのライセンスと公式のライセンスFAQを確認してください(2026年10月31日に確認)。
社内のデータを扱っても安全ですか?
クラウド版では、データはn8nのサーバーを通ります。社外に出したくないデータがある場合は、自社のサーバーで動かすセルフホスト版を選ぶ方法があります。どちらの場合も、AIなど外部のサービスにどのデータを渡すかを決めておくことが大切です。
まとめ
- n8nは、メール・LINE・スプレッドシート・AIなどをつないで、決まった仕事を自動で回すツールです
- 今のやり方を変えずに、社内の手作業だけを減らせるのが強みです。書式がばらばらの書類も、AIと組み合わせれば読み取れます
- クラウド版とセルフホスト版があり、手間とデータの扱いで選びます
- AIの読み取りは人の確認とセットにし、止まったときに気づける仕組みにしておくと安心です
「この作業、n8nで自動にできる?」という段階からご相談いただけます。私たちの業務効率化サポートでは、n8nなどを使った業務の自動化を、仕事の流れの整理から運用まで一緒に進めています。


